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Please call my name
日本のバレンタインは過ぎ去ったけど、世界のどこかはまだ2月14日だろう。
バンクーバーは確実にまだ2月14日だろう(と、信じてる)。

ということで、バレンタイン記念に短編一本仕上げました。

しかし、バレンタインもチョコも出てません!
でも出来るだけ「いちゃいちゃ」を目指しました。

目指した挙げ句、着地点が分からなくなってますがそれはまあご愛敬で。




 名前で呼んでもイイデスヨ?

 君はそう言うけれどね、オトコゴコロは繊細なのですヨ?



 艱難辛苦、紆余曲折の果てに手に入れた恋人は天然記念物乙女。
 その天然っぷりと無防備ぶりは「男ができた」今も全くもって変わらない。
 俺が翌日オフの日には当たり前のように泊まってくれるけれど、それの意味する所は一遍たりとも理解していない。
 いつも楽しそうに食事を作り二人で食べた後は他愛無いおしゃべり、貰い物やレンタルした映画を二人でみる。それだけ。
 今も、クー・ヒズリ主演のDVDを真剣に見つめている。
 横にいる男が何を思っているのかなんて気づきもしないで。


 愛しくて大切で堪らない彼女との仲はキス止まりの所謂「清い」交際だ。
 まだ高校生という枷と嘘がつけない彼女の性格、愛される事に慣れていない彼女を傷つける事だけは出来ないという想い。
 大切すぎて最後の手が出せないという欲望と相反する本音と関係を知る少数の圧力も俺を留まらせていた理由。その筆頭は俺のマネージャー。

 俺が片想い中はやれ「遊び慣れたテクでもってメロメロにしろ」だの「好きな娘とマンションに二人きりで手を出さないなんて信じられない」だの、やたらと俺のケツを叩いてくれた社さんだったが、想いが通じたと分かった途端に豹変した。
 無言で「手ぇ出したらどうなるか分かってるんだろうな」「キョーコちゃんは高校生だぞ。未成年だぞ」と圧力をかけてきたのだ。その変わり身の速さったら驚くばかりだった。
 まあ、そんな有能すぎるマネージャーだったが、俺の手出しがキス止まりだと彼女の態度から察したのか、圧力はすぐに無くなった。
 本当に有能すぎるマネージャーだ。
 同情するように「ま、耐えろ」と言われた時は流石にキレそうになったが。


 そんな思いに耽って見つめていたら、視線を感じたのか彼女はTV画面から俺へと顔を向けた。

「敦賀さん? 映画、つまらないですか?」
 小首を傾げて訊いてくる。
「いや」
 君を見つめていただけですよ。などとは言わない。
「お疲れですか? 私、敦賀さんの体調も考えないでお邪魔しちゃいました?」
「疲れてないよ」
 俺としてはずっとここに居て欲しいんだけど、それを伝えると真っ赤になってしまうからソレも言わない。
「でも……」
「う……ん。ちょっと考え事」
「今度のお仕事ですか?」
 う~ん。君の思考回路ではそうなるだろうね。
「違うよ」
 短く返事をすれば君の関心は映画より俺に移る。
 予想に違わず、君はリモコンを手にとってポーズボタンを押した。
 一時停止か。なかなかクー・ヒズリは手強い。
「私ではお役に立てませんか?」
 心許ない声に理性がぐらつく。
「大した事じゃないよ。映画観よう」
 そう振れば君は映画より俺の方の比重が重くなる事を俺は知っている。
「私じゃ頼りにならないかもしれませんが、何か役に立ちたいんです」
 ほらね。
「本当に大した事じゃないよ。……でも、最上さんにしか出来ないことかな」
 私? と自分を指す君に首肯いて俺は想いを口にした。

「俺はいつまで敦賀さんなのかなって思って」

 ソファに乗せていた腕で頬杖を付き、ちらりと見ると硬直している。

 ほら。俺が少しでも「男」を出すと硬直するんだから。
 こんな状態でどうやったら手を出せるのか俺が聞きたいですよ、社さん。

 ため息を一つ吐いて彼女に向かって
「敬語はさ、我慢するけど名前くらいは呼び捨ててくれてもいいんじゃない? 俺って最上さんの恋人だよね」
 言えば赤くなってあわあわと視線を彷徨わせる。

 ああ、その様も可愛いなあ。

「えっ…と、その、や、だって………」

「名前で呼んでくれないの? 俺って最上さんの中でその程度?」
「その程度って……その、どの程度?」
 おお、そう来たか。
「うーん。社さん、程度? 親しい年上の人」
「そんな事ないです!!!」
 即座に否定してくれてありがとう。悩まれたらへこんだな。
「俺って最上さんの恋人だよね?」
 再度問えば恥ずかしそうに頷いた。

 耐えろ、俺!

「じゃあ、呼んで? 蓮って呼んでよ」

 重ねてねだったら動揺が激しくなった。

「ぃ!? れ、れ? れれれれ……って、や、その、無理ですぅ!」
「何で?」
「何でって、だって、その、無理!」
「………………」
「無理。呼び捨てなんて無理です。名前でなんて!」
「………………」
「敦賀さんは敦賀さんなんです! だから敦賀さんなんです!」
 だから敦賀さんなんですってのがイマイチ分からないが予想していた反応だったな、と思っていたらじっと見つめられた。
「ん? なに?」
「あ、の。私も訊いてもいいですか?」
「いいよ。なに?」
 彼女は俺に向き直って口を開いた。

「私はいつまで最上さんなのでしょうか?」

 え? 即座に反応できなかった。

「あの、敦賀さんは名前で呼んでくれないって言いますけど、敦賀さんだって私を名前で呼んでませんよ」

 あ……意識して遠ざけていた事を言われてしまった。

「最上さんは最上さんです。だから最上さんなの」
 返したら彼女は膝を進めて俺との僅かな間を詰めた。
「名前で呼んでいいですよ?」

 ほんのりと頬を染めての上目遣い。

 それ、反則だよ。

「敦賀さん?」
 溜息吐いてしまった。

 リモコンを自分の傍に置いてから彼女を抱き寄せて足の間に座らせる。所謂カップル抱き。

「呼び捨てるなって言われたんだよね、昔」
 抱きしめて首に唇を当ててから呟く。
 見上げてきた瞳には戸惑いが浮かんでいる。
 昔の女に言われたとでも思ってるな。
「トラウマになったな、アレ」
 どう反応していいのか困っている。その瞳に向かって俺は囁く。
「君だよ。俺、結構傷ついたんだよね」
 はぇ? なんて間抜けな声が聞こえてきた。
 俺はリモコンの停止ボタンを押してDVDを止めた。クー・ヒズリの映画はまた今度。
「呼び捨てるなって、私が? 敦賀さんに? 嘘です! そんな事言ってません」
 必死に抗議する君。すごい勢いで記憶を探ったんだろうな。
「言いました」
「嘘です。そんな失礼なことしません!」
「しました。君が覚えていないだけです」
「そんな事ありません。大体、マトモに名前を呼ばなかったのは敦賀さんのほうです」
 多分、敦賀蓮と出会ってからの事を思い出しているんだろう。
 残念ながら、言われたのは敦賀蓮じゃないんだよ。
 黙ってて悪いと思うけど気付いて欲しいんだ。
「今はちゃんと呼んでるでしょ。それに……面白くないし」
 アレ、とTV画面に視線を動かす。映っているのは歌番組。
「アイツら、呼び捨てにしてるし。恋人の俺が同じ呼び方を後からするのは気に入らない」
「同じって………」
 呆れたような声音だった。実際、呆れてるんだろう。
 幾らでも呆れていいよ。本当に面白くないんだから。
「片方は一応、幼馴染だから我慢するけど、もう片方は本当に気に入らない」
「や、気に入らないって言われても……。勝手に呼んでるだけだし。そもそも芸名が本名と同じだからしょうがないじゃないですか」
「京子はいいの。芸名だから。でも本名を呼ばせているのは嫌なの。俺はダメ出しされているのに、アイツらは何も言われていないから余計にね」
 そのダメ出しっていうのが全く身に覚えがないんです、と必死に記憶を探る彼女。
「だから、俺は最上さんでいいの」
 どうせ今しか呼ばないんだし、今じゃ俺しか呼ばない名だし。

 そうか。そう考えたら「敦賀さん」でもいいか。
 いずれ変わる呼称だし。
 君が呼ぶ事に意味があるんだしね。

「いいよ、敦賀さんで。さっきのは忘れて。困らせてごめん」
 俺の「ダメ出しされた」に一体いつそんな事を言ったのか必死で思い出そうとしている君を強く抱き締めて言った。
「敦賀さん?」
「最上さんが呼んでくれるなら何でもいい事に気が付きました」
 不思議そうに見上げてくるから、俺はバツが悪くなって出来るだけ軽い言い方をした。
 そうしたら君は僅かに考え込んで「あの……」と俺を呼んだ。
「二人しかいないのに内緒話?」
 伸び上がるように俺に向かってくる彼女の口元に耳を寄せる。
 内緒話そのままに小さく小さく彼女は囁く。


「Please,call my name……」


 合った視線は瞬きの間に逸らされ、彼女は体育座りでテレビを観ている。

「ねぇ。最上さん、もう一回言って?」
「言いません」
「こっち向いて?」
「や、です」
「どうして? 最上さん。最上さーん」
「………………」
「こっち向いてよ。キョーコちゃん」
 紅に染まった耳に向かって、昔、数日だけ呼んでいた名を口にした。
 同じイントネーションで。でも、記憶のコーンとは違う声で。

 僅かに身動ぎ益々赤くなっていく耳。でも俺を見ないその姿に愛しさが増した。

 本当に、君に恋をして良かった。
 君を愛さなければ俺はずっと何が欠けているのか判らないままだったよ。

 君は太陽みたいに暖かくて、キラキラとして俺の世界を照らしてくれる。
 君が呼ぶ名こそが俺の真実。

 ならば───。

「ねぇ。こっち向いて、kyoko」

 まだ誰も呼んでいない俺だけの呼び方で君を呼ぼう。

 ぎこちなく見上げる熟れた頬に音を立てて口付けて、腕の中の熱を抱き締め直して願う。

 俺が呼ぶ君の名こそが君の真実となるように。



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テーマ:二次創作 - ジャンル:小説・文学

[2010/02/15 14:45] | 短編 | トラックバック(0) | コメント(0)
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