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プライスレス
週末に某様とのおしゃべりしていたやり取り。
その後、某様に「夢オチだけど書いてもいい?」と話したところ、読みたいと仰っていただきました。
夢オチとしか言ってなかったので、まさかこんな夢とは思ってないだろう。

そしてオチはギャグだったはずなのに……と首を傾げています。

よろしければどうぞ。


     拾ってください


 
そう書かれた箱には黒い子犬がつぶらな瞳で立ち尽くす人物を見上げていた。

 不自然すぎる。
 極めて不自然だ。
 どこからどう見ても不自然だ。

 人通りの激しい往来で捨て犬なんてフツーじゃないし。

 なにより、

 その箱が不自然すぎる───。

 キョーコは心の底から心の中で激しく突っ込んだ。

 なぜなら。

 キョーコの目の前に鎮座ましますショッキング・ピンクの箱には、

 拾ってください 名前はレンです

 と、側面に書かれた文字ともどもキラッキラのラインストーンやデコパーツで装飾が施され、真っ赤なリボン(どう見ても絹)まで付けられていたからだ。

 そしてひっそりと箱に印刷されているのは「LME俳優部」。

 イヤ! 絶対イヤ!

 こんな胡散臭い犬、死んでも拾わない!

 そう決意するキョーコの前で子犬は「くぅ~ん」と憐れを誘う声で鳴き、耳を垂れて小首を傾げた(ビクターの犬状態)。

 ダメ! ダメよ! 目が合ったって絶対駄目!

 そんな瞳で見てもダメよ!

 心を鬼にして立ち去るのよキョーコ!
 それにだるま屋は飲食店だから動物は飼えないの! 拾えないわ!

 自分に言い聞かせて、ぎゅっと目を閉じ踵を返した。

 その時、高らかに鳴り響くファンファーレ。

 え? と瞼を開けると飛び込んできたのはロココな衣装に身を包んだ男女。

 これはもしや社長さんのお付ダンサーズ?

 呆然とするキョーコと捨て犬を挟んで並ぶダンサーズ。

 これは何なの~~~~~!!!

 逃げようにもロココな人間バリケードは車道を横断し向こう側まで続いている。

「くぅ~ん」
 哀れを誘う声に振り返れば、子犬がじっと見上げている。

 ふるふると首を振るキョーコ。

 狭まる包囲網。

 潤んだ瞳の子犬。

 じっとキョーコを見詰めていた子犬は視線を外すと項垂れた。

 その様は罪悪感やら哀れみやら後ろめたさやら、人が持つそういった感情を激しく刺激した。

 どうしよう。どうしよう。どうしよう。
 キョーコの思考は混乱した。
 ここで子犬を見捨てるのは人として許されない行為のような気がする。
 しかし、胡散臭い箱に入っている子犬が「胡散臭くないわけがない」し、間借りしている身として動物を飼うなんて事は出来ないのだ。

 すると項垂れた子犬が顔を上げた。
 一度、キョーコに視線を合わせると頭を下げ、箱の中から何かを咥える。

 それは───。

 ショッキングピンク………。

「いぃ~やぁぁぁぁぁぁ~~~~~!!!」

 ラブミー・ユニフォーム。

 なんで?
 どうして?
 箱の中にラブミーユニフォーム?

 子犬はユニフォームを咥え、ダンサーズは輪になりマイムマイムを踊っている。

 逃げ道なし?
 って、どうしてマイムマイム?

 ワルツだろうがタンゴだろうが東京音頭が花笠音頭に変わろうが嫌だ。
 サンバのリズムで泥鰌掬いという日伯融合を果たそうともイヤ!

 というよりも、囲まれて踊られるなんて何の曲だろうと御免だ!

 呪術的なナニかのイケニエの気分だ!

 イヤ、イヤよ。

 キョーコは子犬に向かって首を振り………。

 何か、この犬、育ってない? おっきくなってない?

 混乱するキョーコの右手がポケットに触れ、カサリと音をたてた!

 これは魔法のカード!

 忘れていたわ! 困ったときはコレよ!

 これで助かる!
 一縷の望み! 一筋の光!

 伝家の宝刀!

 キョーコはポケットに入っていた三枚のカードを取り出し意気揚々と目の前に広げた。
「どうする? どうする私?」なんて得意げに口走りながら………。

 「拾う」 「拾う」 「拾う」

「選択肢、ないんかい!」
 カードに書かれた文字を見た途端、それを地面に叩きつけ、思いっきり突っ込んだ!

「なんで同じカードなの。しかも拾うだけ。コマーシャルじゃあ『どうするオレ?』なんてどきどき展開なのにぃ~。これじゃあ『続きはwebで』にならないじゃないのぉ」

 ぺたりと地面に座り込みキョーコは子供のように泣き出した。

「なんで捨て犬を拾わないだけで社長さんの踊り子さんたちに囲まれて、逃げ道を阻まれなくちゃならないの? 子犬はちょっと目を放した隙に大きくなってるし。真っ黒だし。ラブミーユニフォームだし。もうラブミー部員なのに」

 わんわんと泣くキョーコの元に犬が静かに近寄った。

「ふぇ?」

 前足を座り込んだキョーコの膝に乗せて注意を引く。
 キョーコが犬を見ると、口にカードを咥えている。
 掌を差し出すとそっとカードを乗せる。

 クレジットカード?
 これって、ブラックカードってやつじゃないの?

 キョーコは目を見開き一拍遅れて犬を見た。

 黒い犬は尻尾を振り、にこやかに微笑んで一言。

『想い出は、プライスレス』


 いやぁぁぁぁぁああああ!!!!


「……ツ……セツ。セツ! セツカ! ……最上さん!!!!」
「いやあああ!!! 一生ラブミー部でいいです!!!」

 キョーコは叫び声を上げ、目を開けて、瞳に映るものを認めた途端。

「捨て犬!」と叫び「絶対、拾わない」と泣き出した。

「最上さん。最上さん!? どうしたの? 最上さん?」
 丸まって泣きじゃくるキョーコに蓮は辛抱強く呼びかける。

「最上さん」
 幾度目かの呼びかけにようやっとキョーコが蓮を見上げた。
「つるが、さん?」
「どうしたの? 魘されてたよ。夢でも見たの?」
「ゆめ……ここ……?」
 起き上がって回りを見回すキョーコの涙を蓮はティッシュで拭ってやる。
「ホテルだよ。どうしたの、怖い夢でも見たの?」
 その言葉に室内を彷徨っていたキョーコの視線が蓮に注がれる。
「ゆめ……」
 ぽつんと呟くと目元に新しい涙が浮かぶ。
 蓮はキョーコのベッドに腰かけ、頬を両手で包み込む。
「夢を見たの?」
 訊ねると頷く代わりにゆっくりと瞬きをした。
「どんな夢だったの?」
 零れる涙を親指で拭って優しくキョーコに訊いた。
「こ、子犬が……子犬が捨てられてて……社長さんの、ダンサーズに……か、囲まれて…ラブミーユニフォーム咥えて…魔法の、カードは拾うだけで…子犬は育つし…想い出はプライスレスって……って……う、うっ、ひっ……」

 は?

 切れ切れに語られる内容は何がなんだか全くわからないものだった。

「マイムマイム踊るんですぅ~~~~」

 うわぁ~ん、と本格的に泣き出したキョーコに夢の説明は無理と判断して、抱き寄せて落ち着かせるように背を叩いた。

 捨て犬がいた。
 社長のお付きダンサーズはキョーコを囲んでマイムマイムを踊った。
 ラブミーユニフォームを咥えてって……捨て犬が咥えてたのか?
 魔法のカードってなんだ? プライスレスは何だ?

 これのどこが魘されるほど怖い夢なのか。

 社長のお付きはある意味、怖いと言えるかも知れないが魘される程とは思えない。

 夢だしな………。

 蓮は原因究明を万能の言葉で放棄した。

 蓮のパジャマを握り泣きじゃくっていたキョーコの泣き声は収まり、僅かに身じろぎした。

「落ち着いた?」
 蓮が覗き込むとキョーコは頷く。
 良かった、といい置いて冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出すとグラスに注いでキョーコに渡しバスルームに向かう。
 濡らしたタオルを手に戻ると、空になったグラスを受け取る。

「すみません。起こしてしまって……」
「たまたま目が覚めたんだ。起こされた訳じゃないよ。気にしないで」
 恥じ入るように呟かれた言葉に蓮は微笑んで答える。
「まだ夜中だ。横になってコレで瞼を冷やして。明日、腫れると大変だから」
 促して目の上に濡れタオルを乗せて、髪を撫ぜると囁いた。
「大丈夫。眠るまでここにいるから」
 言われてキョーコは慌てたが「心配だから」と続けられれば遠慮するわけにもいかなかった。

 落ち着かせるように肩を一定のリズムで叩いていた蓮が訊ねた。

「どんな犬だったの?」
「黒い、子犬でした」
「捨てられてたんだ」
「はい。可愛そうでした」
「そうか」

「最上さんは犬を飼ったことはある?」
「いいえ。だるま屋は飲食店だから飼えないし、ショータローの家も旅館でしたから犬も猫も飼ったことはありません」
「そう……」

 灯りを絞った室内にポツポツと囁きが交わされる。

 出てくるのが実家ではない事、それに気付いていないキョーコに蓮の胸が痛んだ。

「次に捨て犬を見つけたときは俺の所に連れておいで」
「敦賀さん?」
 ふっと笑って蓮はタオルを外した。
「もう大丈夫かな。───犬、だるま屋で飼えないなら俺の所で飼えばいいよ。部屋なら余ってるから犬が一匹増えても困らないし」
 目を閉じて、と片手でキョーコの視界を遮る。
「でも、敦賀さん、お忙しいでしょう?」
「心配なら様子を見に来ればいいよ」
「ああ。それなら敦賀さんの食事事情も監視できますね」
 クスクスと笑うキョーコに「監視される程、信用ないんだ」と蓮は笑う。
「だから、また夢に捨て犬が出ても大丈夫。安心してお休み」
「はい」
 キョーコは素直に頷くと深く呼吸して瞳を閉じた。
 そのキョーコの髪を何度も蓮は撫ぜる。

「そういえば……」
 低い呟きを拾ったのか眠りに入りかけていたキョーコが返事をした。

「犬に名前はついてたのかな?」
「いぬ? ……レン……」
「れん?」
「レンって箱に………」
 怪しい呂律でキョーコは呟く。

 黒い子犬がレン、ね。

「れんなんだ?」
「ん……れん」

「じゃあ、俺は? キョーコちゃん」
 小さく小さくキョーコの耳元で囁く。

 ぽにゃ、っと定まらない視線で蓮を確認すると安心するように微笑んで
「ん……こぉ…ん……」
 呟いて眠りに落ちていった。


「確かに、想い出はプライスレスだな」

 どうやら『俺』は君にとって子犬として認識されたみたいだな。しかも、敦賀蓮と間違うくらいだし。

 カインとしての行動の数々を思い出して蓮はいたずらっ子の様な表情を浮かべた。

「キョーコちゃん。これからも想い出一杯作ろうね」

 洋服も指輪も買った。さて、次は何で攻めようか。
 靴はまだだったな。ああ、化粧品もあったな。
 何を買っていないか思い出した男は口元を歪める。

 どうやら君は俺を拾う以外に道はないみたいだし。

 魔法のカードは「拾う」しかなかったんだろう?

「大丈夫だよ、俺がいるからね」
 そう呟いて蓮はキョーコの額に口付けを落とす。


 翌日よりカインの浪費癖と子犬の表情に拍車が掛かるのを眠り姫はまだ知らない。

La fin
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テーマ:二次創作:小説 - ジャンル:小説・文学

[2010/05/18 04:28] | ACT.157 関連妄想 | トラックバック(0) | コメント(2)
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コメント
かわいいです!
めっちゃ可愛いです。
もう萌え死にそうなくらい可愛いです。
ありがとうございましたv
[2010/05/19 19:33] URL | amethyst rose #- [ 編集 ]
萌え死にしそうなくらい可愛いって言ってくれてありがとうございます。
喜んでもらえて嬉しいです。v-10

わんこ、好評だなぁ。
書いた本人、驚いてます。
[2010/05/24 01:59] URL | AKI #- [ 編集 ]
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